大企業の会社紹介動画に学ぶ、伝え方の設計|トヨタ・Honda・村田製作所ほか

誰もが名前を知っている企業も、会社紹介動画を作っています。知名度があるぶん説明は不要に思えますが、実際の動画を見ると、大企業ほど「何を伝えないか」を厳しく選んでいることが分かります。中小企業が自社の動画を作るうえでも参考になる点を整理しました。

知られているからこそ、誤解を解く

スシロー(FOOD&LIFE COMPANIES)|スシローのこと、知らなかった。

タイトルがそのまま企画意図になっています。回転寿司チェーンとして誰もが知っている企業が、あえて「知られていない部分」を説明するために約6分13秒という長い尺をとっています。

知名度が高い企業には、消費者としてのイメージが先に固定されているという課題があります。「お店で働くのだろう」と思われたまま、本社機能や商品開発、海外事業といった仕事が知られない。この動画はその誤解を解くために作られています。

製品ではなく、姿勢を語る

トヨタ自動車|TO YOU篇

特定の車種を売り込むのではなく、企業としての姿勢を伝えるブランド広告です。ちょうど60秒。テレビCMを前提とした尺で、伝えたいことを極限まで削っています。

本田技研工業|会社紹介動画

従業員へのインタビューを通じて企業概要と目指す姿を描いています。約3分24秒。製品ではなく、そこで働く人の言葉を軸に据えた構成です。

いすゞ自動車|Moving the World

ドライバー不足による輸送力の低下、効率的な物流への転換、地域ごとの脱炭素化という3つの課題を挙げ、それに対する自社の役割を語ります。約2分50秒。商用車メーカーから次の段階へ進もうとする方向性を、社会課題を起点に説明する形です。

3社に共通するのは、製品の性能を語っていないことです。すでに製品が知られている企業にとって、あらためて説明する価値があるのは「なぜそれを作っているのか」のほうだ、という判断が働いています。

用途に応じて、長短を作り分ける

村田製作所|会社紹介ショートVer.

1分30秒のショート版で、概要欄には約9分のフルバージョンも案内されています。入口では短い版、詳しく知りたい人には長い版という使い分けです。

さらに注目したいのが、概要欄に「2024年11月に発表した中期方針2027にもとづき一部内容を更新しています」と明記されている点です。2023年制作の映像を、方針変更に合わせて部分的に更新している。動画を作りっぱなしにせず、経営方針の変化に合わせて手を入れるという運用です。

人物を通して技術を見せる

村田製作所|魔改造の夜に挑んだ開発者たち

NHKの番組への出場を入口に、開発者の人物像に迫る構成です。約4分5秒。電子部品という、実物を見せても分かりにくい製品を扱う企業が、技術力を人を通して伝えている例です。

採用では、価値観に絞る

アビームコンサルティング|採用コンセプト動画

ブランドスローガンをテーマにした物語仕立ての動画です。約2分26秒。事業内容やプロジェクト事例ではなく、働くうえでの姿勢に絞っています。

京セラコミュニケーションシステム|a Day in The Life

社員2名の一日を追う疑似体験型。1分30秒。会社の規模や実績ではなく、日々の働き方を見せることに徹しています。

シャープワンストップサービス|採用コンセプトムービー

約1分6秒。大切にしている価値観に絞った構成で、応募前の職場見学を受け付けている旨も案内されています。高等学校卒業者の採用にも触れており、対象を広くとっているのが特徴です。

事業が広いと、動画は長くなる

ポニーキャニオン|会社紹介動画 フルver.

音楽、アニメ、映像、映画、ライブ、イベント、グッズ、ファンクラブ、地方創生。事業領域が広く、それぞれを順に紹介するため約10分56秒になっています。

多角化した企業が全事業を紹介しようとすると、必然的に長くなります。この長さを許容するか、分野別に分割するかは判断の分かれ目です。前者は会社の全体像が一度に伝わり、後者は見る側の負担が軽くなります。

中小企業が学べること

大企業の動画は予算も制作体制も違うため、そのまま真似はできません。ただ、判断の仕方は規模によらず応用できます。

ひとつは伝えないことを決めること。トヨタは60秒で製品を語らず、KCCSは1分30秒で会社の実績を語りません。何を入れるかより、何を捨てるかで動画の輪郭が決まります。

もうひとつは作ったあとの運用です。村田製作所のように、経営方針が変われば映像も部分更新する。会社紹介動画は一度作って終わりではなく、会社が変われば古くなります。数年後に見直す前提で作っておくと、更新しやすい構成を選べます。

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